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空調のゾーニングが病院の空気感染対策で重要な理由

感染症の患者さまを受け入れ治療を行う病院では、感染症が拡大しないよう部門配置や人・モノの動線、設備・機器にいたるまで、さまざまな感染対策が講じられています。そのなかでも空気感染対策に不可欠といわれるのが、空調設備です。

「病院設備設計ガイドライン(空調設備編)」を参考に、空調ゾーニングの考え方をはじめ、設備設置時の注意点などをお伝えします。

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空気感染対策に必要な空調ゾーニング

医療施設で行われる「ゾーニング」とは、感染拡大の防止を目的として空間を分離することをいいます。細菌やウイルスなどの病原体の有無によって清潔区域と汚染区域を分けます。

ゾーニングにおいて、人の動線や物の配置に加えて考慮すべきなのが空気の流れです。清潔・不潔区域に合わせて空気の流れをコントロールすることを空調ゾーニングといいます。

圧力の高い方(陽圧)から低い方(陰圧)へ流れる空気の気圧差を利用して風の動きを調整し、各部屋を適切な状態に維持します。

【陽圧化】
感染リスクが高く清潔な空気が要求される場所では、外からの汚れた空気を防ぐために風を押し出す
対象エリア:感染症病室、細菌検査室、汚物処理室など

【陰圧化】

感染源のある場所では外に感染を広げないように風を吸い込む
対象エリア:手術室、ICU、無菌病室など

【部門別】空調ゾーニングの考え方

空調ゾーニングを行う際に設置が望ましいとされるのが、空気の緩衝帯である「前室」です。前室とは、廊下と感染症病室の間に設ける空間のこと。スタッフの出入りなどでドアを開放した場合の空気の流出を減らす効果があるとされています。

ここからは、「病院設備設計ガイドライン/空調設備編 (HEAS-02-2022)」で推奨されるゾーニングの例を紹介します。

病棟の場合

1. 感染患者が入院する場合

感染源となる患者さんの部屋は、他の部屋へ空気が流れないよう陰圧に設定します。廊下>前室>病室の順に圧力が低くなるようにすることで、感染源を含む空気の流出を減らします。汚染区域の空気は吸込口からダクトを通り、建物外へ排出されます。

感染症患者が入院する場合の空調ゾーニング

2. 感染性疾患を合併した易感染患者が入院し、陰圧管理を行う場合

易感染患者さん(*)の場合、他の感染源から守るために清潔な空間で治療を行う必要があります。

前室が病室・廊下どちらに対しても陽圧となるように設定します。廊下<前室>病室と、前室の圧力を高く維持することで前室を清潔な空間に保ち、その先の病室へ病原体が流入しないようにします。同時に、前室に対して病室を陰圧にすることで、病室内の感染源を含む空気が室外に流出するのを防ぎます。

(*)免疫不全疾患などで抵抗力が低下し、感染が起こりやすい状態の患者さんのことをいいます。

易感染患者が入院するときの空調ゾーニング

手術部門の場合

新型コロナウイルス感染症の流行を経て、感染症対応手術室のニーズも増加しています。感染症対応手術室前室は、前述の「病棟3」のケースと同様の考え方をします。

手術を行う患者さんに対して清浄度を保つため、手術室は陽圧を維持し手術ホール>手術室前室<手術室と、手術室前室の圧力が最も低くなるようにコントロールします。手術室内で発生した病原体は手術室前室まで拡散しますが、手術ホールへの拡散を防ぐことができます。

空気感染対応手術室の空調ゾーニング

ただし、ドアを開放すると陰圧を維持できません。
廊下側と手術室側の扉を同時に開放しないなど、運用には注意が必要です。

空調設置の注意点

空調ゾーニングを適切に行うには、空気の流れをコントロールするために空調設備による陽圧・陰圧管理が必要となります。ここからは、空気感染対策を目的とした設備整備を実施する際に、注意すべきポイントをお伝えします。

部屋の広さや空気排出先の確認など、設置条件がある

既存施設で一部の空間を陰圧化する場合、陰圧装置の設置とそれに伴う工事が発生します。以下の設置条件を満たした場合に、陰圧化をすることができます。

  • 十分な設置スペースがある

  • 空気排出先を設けられる

  • 既設の予備電源がある

空調設備工事は建築に関わるため、詳細検討に必要な既存情報(図面)の提供をお願いすることもあります。

また、設置する製品によっても確認事項は異なります。例えば、床置きタイプの簡易陰圧装置を設置する場合、以下のような確認事項が発生します。

・部屋の広さ、容積(換気回数)の確認
・設置スペースの確認
・屋外排気ルートの確認(窓の有無)
・使用可能なコンセントの有無(100V 15A)
・差圧計の取付場所の確認
・外調機の要否、設置スペースの確認

※上記は一例となり、設置場所によって確認事項は異なります。

工期

製品の種類や設置場所によって工期は変動します。

 床置きタイプの簡易陰圧装置

短工期、低コストで設置可能なタイプの簡易陰圧装置です。
1台であれば、約1日で施工が可能です。

感染症病室に簡易陰圧装置が設置されている

天井カセット形簡易陰圧装置

恒久的な設置に適した、隠蔽型の陰圧装置です。
装置を吊るスペースやダクトの取り回しなど、設置場所の状況に応じて変動しますが、一般的には1台で2~3日程度で施工が可能です。

感染症対応_天井カセット形簡易陰圧装置
天井カセット形簡易陰圧装置
感染症病室に天井カセット形簡易陰圧装置が設置されている
天井カセット形簡易陰圧装置 設置の様子

▼簡易陰圧装置について詳しくはこちら

【新興感染症対応力強化事業】手術室や処置室の陰圧化が助成の対象になる場合も

2024年4月より、新興感染症対応力強化事業が創設されました。
新興感染症が発生した際に速やかに対応できるよう、都道府県と医療措置協定を締結する医療機関に対して、感染対策を目的とした施設・設備整備を補助する制度です。

▼事業の詳細はこちら

厚生労働省によると、148億円の予算がついており、具体的には以下の内容が補助対象となっています。

・感染患者を受け入れるための個室病床の整備
・簡易陰圧装置や検査機器などの設備整備
・個人防護具の保管施設整備

出典:令和6年度 予算案の概要(厚生労働省医政局)
改正感染症法に基づく医療措置協定 について(報告)

本記事で紹介したゾーニングを実践する際に発生する改修費用や、簡易陰圧装置の設置も補助対象になることもあります。都道府県によって補助条件や申請期日が異なりますので、詳細は都道府県のホームページをご参照ください。

セントラルユニでは簡易陰圧装置をはじめとした感染症対策製品を取り扱っており、ゾーニングのお手伝いもしております。
新興感染症対応力強化事業の対象医療機関の方で「どのように進めていいのか分からない」という方は、ぜひ当社までご相談ください。




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