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いのちを守る機器点検のはなし

おうちにある家電のお手入れ、やっていますか?
例えば、エアコンのフィルター掃除や電子レンジ・冷蔵庫の庫内掃除、洗濯機の槽洗浄など……。

ご家庭によってその頻度は違うと思いますが、日常的にやるお手入れから、数か月単位に一度行うようなお手入れ、さらには年に一度の大掃除など、日々手をかけながら、おうちの家電をお使いになられていると思います。

実は、私たちが取り扱う医療機器や医療設備も、家電と同じく日々のお手入れや点検が必要です。

病院では、日々どんなお手入れや点検がされているのでしょうか?
医療機器や医療設備になぜお手入れや点検が必要なのか、当社の製品を例にお伝えします。

医療機器や医療設備には、なぜお手入れや点検が必要なのか

その答えはシンプルに「患者さまに対して安全に治療を提供するため」です。

患者さまを守り、医療従事者が安全に使用できるよう、医療機器や医療設備には、さまざまな取り決めがあります。

医療機器を例にみていきましょう。
医療機器の製造・販売は、法律に基づき申請を行い、厚生労働省や各都道府県の許可・承認を得ないと製造・販売をおこなうことができません。

そして、以下の観点で薬機法によりクラスが分類されています。
 1. 侵襲性の高さ(※1)
 2. 万が一不具合が生じた場合に、患者様の命にどのくらいの危険があるか

※1 侵襲とは、医療行為において、投薬や注射、外科手術など、治療のために「生体内に何らかの変化をもたらす(生体に傷をつける)」行為全般のことを指します。
例えば、呼吸管理のために気管挿管を行うなど、患者さんの身体へ負担がかかる医療行為を「侵襲性が高い」といいます。

医療機器のクラス分類

クラスI:一般医療機器 人体へのリスクが極めて低いもの

 例:メスやピンセットなどの鋼製小物、救急絆創膏など

クラスⅡ:管理医療機器 人体へのリスクが比較的低いもの
 例:電子体温計、診断用X線装置、家庭用電気マッサージ器など

クラスⅢ:高度管理医療機器 人体へのリスクが比較的高いもの
 例:コンタクトレンズ、医療用X線装置、新生児用保育器など

クラスⅣ:高度管理医療機器 侵襲性が高く、不具合が生じた場合に生命の危機に直結する恐れがあるもの
 例:ペースメーカ、プログラム式植込み型輸液ポンプ など

参考:医薬品医療機器総合機構 医療機器等関連情報

さらに、「特定保守管理医療機器」(※2)の指定を受けることもあります。

※2 保守点検、修理その他の管理に専門的な知識及び技能を必要とすることからその適正な管理が行わなければ疾病の診断、治療又は予防に重大な影響を与えるおそれがあるものとして、厚生労働大臣が指定する医療機器のことを指します。

参考1:厚生労働省 薬機法第41条第三項に基づく基準 (基本要件基準)
 参考2:医薬品医療機器総合機構 医療機器等関連情報

医療機器はこうした細かな分類をすることで、製造・販売のステップだけではなく、販売後の点検や修理もしっかり行う仕組みをつくり、患者さまの命を守っています。

一方で、医療設備については、医療機器のようなクラス分類はありません。しかし、安全に使っていただくためにも、定期点検やお手入れは必須です。

当社が扱う「医療ガス設備」は保守点検が法的に義務付けられており、年4回以上の定期点検が推奨されています。

つまり、医療機器も医療設備も「患者さまに対して安全に治療を提供する」ために、適切な管理が必要になるのです。

日常のお手入れや点検ってどんなことをしている?

ここまでは、なぜ医療機器や医療設備に点検やお手入れが必要なのかを説明してきました。
では、病院においてお手入れや点検はどのように行われているでしょうか?
当社の製品を例にご紹介します。

医療ガス設備 アウトレット


医療ガス設備 アウトレット(医療ガスを医療機器に接続する出口)

医療ガス設備には“保守点検指針”が定められており、それに従い、日々点検を行います。
アウトレット(医療ガスを医療機器に接続する出口)について、ある病院様では、日常の点検項目を表にまとめ、毎日決まった時間にチェックを行っていました。

アウトレット点検表

   ▼医療ガス設備については、こちらの記事でも紹介しております。

壁掛式吸引器

当社製品「壁紙式吸引器 vica」

壁掛式吸引器とは、口腔内や鼻腔内にある痰などの気道分泌物を吸い取る「喀痰吸引」という行為に使われる医療機器です。「カテーテル」と言われる細長いチューブに吸引器を接続し、使用します。

壁掛式吸引器の医療機器クラス分類は「Ⅰ」ですが、使用において専門的な知識が必要であることから、前述の「特定保守管理医療機器」に指定されています。

壁掛式吸引器には、清潔に保つためのお手入れや、レギュレータといわれる吸引圧力を調整する器械の点検が必要です。

清潔に保つためには、こまめな清拭や洗浄が必要になります。

お手入れの頻度は病院様によって大きく変わりますが、ある病院様では、1日に1度、患者様の昼食が終わったタイミングで病棟内の吸引ボトルを集め、洗浄を行っていました。

吸引ボトルを洗浄している様子

また、点検項目を表にまとめ、管理している病院様もありました。

吸引器の日常点検項目

どの病院様においても、それぞれ工夫を行い、運用に合わせたお手入れや点検をされていらっしゃいます。

お手入れや点検の方法がわからない!そんなときどうすればいい?

お手入れに困ったら、まずは取扱説明書や添付文書(※3)を確認しましょう。手元に資料がない場合、添付文書は独立行政法人医薬品医療機器総合機構のホームページで確認ができます。

※3 添付文書とは、医薬品や医療機器による治療を受ける患者さまの安全を確保し、適正使用を図るために、医療関係者に対して必要な情報を提供する目的で製造販売業者が作成する文書のことをいいます。

参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構ホームページ

基本的に、当社の医療機器や医療設備は、導入時にスタッフ様へ取り扱い説明を行い、お手入れなどに関する資料一式をお渡ししています。

しかし、病院には様々な医療設備や医療機器が混在しています。
用途が同じ機器でも、メーカーが違うものが複数ある……なんてことも多く見受けられます。
そのため、見たい資料がどこに保管されているのか分からない、ということもあるかもしれません。

そんなときは、お手数かもしれませんが、お使いの医療機器や医療設備に記載されている該当のメーカーに問い合わせをしてみてください。

安全に使うために、適切な頻度でお手入れや点検を

医療機器や医療設備には、安全上の理由からお手入れや点検の頻度が定められています。推奨の頻度でお手入れや点検を行うようにしましょう。

これは余談ですが、メーカー推奨の方法や頻度でお手入れや点検をしていただけることもあれば、守ってもらえずに、比較的早いスパンで一部の部品が壊れてしまうことも……。

ただ、あくまでこれはメーカー目線での話。
医療従事者の皆さまは、日々忙しいなかで時間を割いて、使用する機器や設備のお手入れをしてくださっています。

私たちメーカーも、安全性を担保しつつ、より医療従事者の皆さまに快適にお使いいただける製品開発に取り組んでいかなければいけないと、この記事を書きながら改めて思いました。

「つかう人を、つくる人に」の目線をもって、当社はよりよい病院づくりに貢献していきます。

専門性が高い記事でしたが、最後までお読みくださりありがとうございました。

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