41年ぶりの企業ロゴリニューアル。その裏には、ロゴマークから社名を想起してほしいという切実な願いがあった。
溯ること、7年前―。
2017年に、当社は40年以上使い続けたロゴマークをリニューアルしました。 すべて内製で行ったロゴマークのリニューアルプロジェクトは、7年という時を経て、企業にどんな変化をもたらしたのでしょうか?
当時の中心メンバーである村田さん、石黒さんと一緒にプロジェクトを振り返ります。本記事では、プロジェクト発足からVI(ヴィジュアルアイデンティティ)のデザイン開発までの取り組みをお届けします。
はじまりは、違和感から。
―プロジェクト発足のきっかけを教えてください。
村田:僕は2015年にキャリア採用で入社したのですが、入社当初から、製品や取扱説明書、カタログに入るロゴマークに統一感がないのが気になっていました。ロゴマークの使用方法を記載したガイドラインもなく、なんとなくこのままでいいのかな、という違和感がありました。
―違和感ですか。
村田:社員に対して理念やミッションの体現を促しているのに、ロゴマークをはじめとした「お客様の目に触れるもの」のデザインが統一されていない。社員が行動でブランドイメージをつくったとしても、お客様が目にする表面的なデザインが整っていないと、結果的にブランド価値を下げてしまうのではないか?と感じました。
―そこからどのようにプロジェクトがスタートしたのでしょうか?
村田:はじめは「17:30(ごじはん)活動」といって、終業前の30分間で細々と個人で現状整理をしていました。ある程度、現状整理ができたタイミングで当時の上長に相談したところ、直に当時の社長と話す機会をもらうことができたんです。そこで、ロゴマークの統一を図りたいという一連のプロジェクトに概ね同意をもらうことができました。そこから部内で協力者を募り、手を挙げてくれたメンバーと「CI(コーポレートアイデンティティ)委員会」を立ち上げました。
―当時の社長の反応はどうでしたか?
村田:CI委員会の活動については前向きに賛成してくれました。一方で、ロゴを変えることについては抵抗があったようです。当社は、70年以上続く歴史ある企業です。当時のロゴは、セントラルユニという社名に変更してから約40年間使い続けてきたものだったので、やはり思い入れも強かったようです。
―なぜ「CI委員会」なのでしょうか?
村田:CIはMI(マインドアイデンティティ=理念の統一)、BI(ビヘイビアーアイデンティティ=行動の統一)、VI(ヴィジュアルアイデンティティ=視覚の統一)の3要素が重なって実現します。VIだけではなく、MI、BIについても複合的に取り組んでほしいという経営層の期待があり、CI委員会となりました。
先にVIに取り組むことで、後からの意識変革を期待
―CI委員会の取り組みは、どんな風に進んでいったのでしょうか?
村田:まず明確に決めていたのが、意図をもってVIから取り組むことです。 一般的に、CIは①MI(理念の統一)→ ②BI(行動の統一)→③VI(視覚の統一)とステップを踏んでいきます。当社はある程度①理念、②行動の統一はできていると感じていたこともあり、先にVIを行うことで目に見えるアウトプットを出すことに注力しました。表向きに視覚の統一を図ることで、後から意識や行動がついてくる。そんな変化に期待しました。
―VIにおいては、どんなことに取り組んだのでしょうか?
村田:中長期的なスケジュールを描きながら、まずはロゴマークの検討に着手しました。 僕もロゴデザインの専門家ではないので、ダメなのはわかっているけどいいものはつくれない。だったらせめて、普通のラインまでいきたい。そんな思いで、時代の流れに合わせてシンプルになるようプロジェクトメンバーと協議しながら決めていきました。
村田:ロゴマーク検討と並行して、CIガイドラインの作成も進めていきました。ロゴマークの完成形が見えてからは、名刺や封筒のデザイン変更、見積書や提案資料など、各種営業資料のフォーマット統一を図りました。
ロゴマークのデザインは、C&U=セントラルユニの想起を促すものへ
―振り返ってみて「これは苦労した」というできごとはありますか?
村田:ロゴマークや社名ロゴタイプの調整には苦労しました。僕は最初にこのシンボルマークを見たとき「C&U」って読めなかったんですよ。40年前は最新のフォントだったのでしょうが、今となっては読めない人がいる。それは会社を表すシンボルとして致命的だなと思ったので、最初はこのマーク自体もリニューアルしようとしていました。
―結果として、今もシンボルマークは残っていますね。なぜでしょうか?
村田:シンボルマークを残したいという声が多かったからです。製品に必ず入る「C&U」マークはお客様からの認知度が高く、当時の社長を含め、このシンボルマークに強い思い入れがある社員も多い。それならば、残す方向で検討しようということになりました。
―やはり40年近く使われていたロゴだと、愛着が強い社員も多いのですね。
石黒:特に、旧社名ロゴタイプに使用していた正方形のCUマークには強い思い入れがある社員が多かったですね。検討を重ねた結果、新社名ロゴタイプにはCUマークを採用しなかったのですが、「好きだったのに、なんでなくしちゃったの?」と意見をくださる方もいました。経営層を含めて、社歴が長い方ほど、断腸の思いで新社名ロゴのデザインを決定されていた印象があります。
―ロゴマークのデザイン決定に行き着くまで、どのような検討をしていったのでしょうか?
村田:方向性を決めるきっかけになったのは、当時の社長がお話されたエピソードです。
このエピソードから製品に入るC&Uマークを見て、社名であるセントラルユニを想起してくれるお客様が少ないという問題が表面化しました。
そこからは「C&U=セントラルユニ」を想起してもらうことを念頭に、デザイン検討を進め、最終的に現在のロゴマークに落ち着きました。
CIポリスがみてる!と言われるまでになった
―社内の巻き込みや周知はどのようにしたのですか?
村田:ロゴマークはあらゆる媒体に入っています。製品に入るロゴについては生産本部、封筒や名刺の刷新は管理本部に相談し、関係者を巻き込みながら進めていきました。
石黒:全社員に対しては、66周年を迎える記念日の2017年9月26日に、全社をつないだテレビ会議で説明会を開きましたね。
村田:やりましたねー。でも実際、この一連のプロジェクトの流れを経て、社員の意識は変わりましたよね?
石黒:変わったと思います!プロジェクト以前は、そもそもロゴや営業資料のフォーマットがバラバラでも疑問を持たない社員が多かった印象です。
VIの取り組み後は「このロゴマークの使い方って合ってますか?」という質問をもらうようになり、気にかけてくれる人が増えた気がします。
村田:質問がくるってことは、社員が意識してくれているってことですもんね。
石黒:私たちCI委員会のメンバーが、適切ではないロゴマークの使い方をしていると直すように指摘していたことも後押しになったのではないでしょうか。そのときは「CIポリスがくる!」と言われていましたっけ。笑
このプロジェクトを経て、社員ひとりひとりがVIを意識するようになってくれたのかなと思います。
―結果として、意図していた通りの成果が得られたということですね!
後半は、設計ポリシー編をお届けします
VIの取り組み後も、CI委員会の活動は続いていきます。
後半では、製品づくりに関わる設計ポリシーを決めていった過程についてお伝えします。