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私たちが目指す、これからのICUの姿とは?

私たちは「医療ガスを届けた先の空間やそこで生まれる活動もデザインすべきだ」と考え、ICU部門にも事業を展開しています。

ICU部門では、「ウォールケアシステム」 や「シーリングサプライユニット」と呼ばれる、壁面や天井面から電気や医療ガスなどのエネルギーを供給する製品を提供しています。

近年では、ICU環境において早期のリハビリテーション介入が効果的であることから、ICU向けの「介助リフト」の取り扱いを始めました。

そんな私たちが、ICU環境をつくるときにどんなことを考えているのか?
近年のICUの課題や、私たちが目指すこれからのICUの姿について、ご紹介します。


ICUとは

ICUとは Intensive Care Unit の略で 「生命の危機に瀕した重症患者を、24時間を通じた濃密な観察のもと、先進医療技術を駆使して集中的に治療する」ために高度の診療機器を整備した診療空間、「集中治療室」をいいます。
そして、ICUと名前の付いた診療空間は様々な種類があります。

【ICUの種類】
EICU:救命救急ICU、CCU:冠動脈疾患ICU、
SCU:脳卒中ICU、MFICU:母体・胎児ICU、
NICU:新生児ICU、GCU:新生児回復期ICU、
PICU:小児ICU  など

一般社団法人日本医療福祉建築協会
改定版『医療福祉施設 計画・設計のための法令ハンドブック』
(2018年8月発行)参照

ICU環境をつくるときの要件

ICUは前述のとおり特別な診療空間のため、つくるときに気にしなければならない要件があります。それは下記のような施設・設備としての要件です。

厚労省による診療報酬改訂に合わせて見直される特定入院料の施設基準
・日本規格協会のJIS(Japanese Industrial Standards)規格などにより義務付けられているもの
日本集中治療医学会による集中治療部設置のための指針

特に診療報酬改訂は2年に一度変わるため、動向は常に見ておく必要があります。

ICU環境をつくるときに考えていること

ICUは生命の危機に瀕した重症患者を治療する環境です。つまり、患者さん自身が歩いて入室できるような状態は極めて稀です。
では、患者さんがどうやって運ばれてくるのでしょうか?
私たちは「患者さんがどのように移動してくるのか」といったことも考えています。

患者さんの流れとICUの位置づけ

患者さんはICUにいきなり入ってくるのではなく、すでに別の場所で手術や処置を受けた後に移動してきます。 

これらをふまえると、ICUだけでなく、手術室のあるフロアとICUのフロア、救急部のフロアとICUのフロアがそれぞれどのような位置関係か、経路となる距離はどれぐらいか、その廊下幅は適切か?など、検討事項が拡がっていきます。

医療従事者の皆さんと悩む

病院は各病院ごとにそれぞれ独自の建築計画に基づいて作られていくため、建物の大きさ、フロアの広さ、各部門の規模などもそれぞれの病院の方針、コンセプトに従って異なります。

私たちはその制約の中で可能な限りの検討をするために、「CARIV」というセントラルユニが独自に開発した3Dシミュレーターソフトを駆使して、患者さんの搬送経路であったり看護師さんの見守りの視点であったり、図面だけでは決めにくいことを医療従事者の皆さんと一緒に考えています。

フロア全体を考える

もちろん、フロアだけでなくICUの部屋自体も、3Dシミュレーター「CARIV」を用いて、医師の視点・看護師の視点などを取り入れながら複合的に検討しています。

治療空間を考える

「CARIV」の良いところはその場でシミュレーションできること。
例えば、間仕切りに窓があるとどう見えるのか、間仕切りはどこまで通路側まで伸ばせるのか?といったことを視覚的に検討できるので、職種間の合意形成などにも活躍しています。

最近のICUの課題

ICUは高度な治療を行うため、日々進化する医療技術、あらたな知見などによって、治療方法も変わっていく傾向があり、最新の技術や知見をキャッチアップしていく必要があります。
ここ数年私たちが着目しているのは集中治療後症候群(PICS)※や「早期離床・リハビリテーション」です。

※集中治療後症候群(PICS)とは、ICU 在室中もしくは ICU 退室後、さらには退院後に⽣じる⾝体障害・認知機能・精神の障害のことをいいます。
近年、集中治療医学において解決すべき重要課題になりつつあります。

日本集中治療医学会「PICSとは」 https://www.jsicm.org/provider/pics/pics01.html 参照

ICUにいる患者さんは重症だから鎮静して寝たきり状態、というのはもう昔のはなし。今は重症であっても可能な限り社会復帰にむけたリハビリテーションを行っていく方向に進化しています。しかしながら、この早期離床・リハビリテーションは医療従事者の皆さんの労力が大きく、これまでにない課題として現れてきます。

医療従事者の皆さんの課題

一方、患者さんの視点に立つと、高度な治療をするための医療機器から出ている様々な音や、閉鎖的な空間という居心地の悪さなど、肉体的な負担だけでなく精神的な負担も強いられており、これが集中治療後症候群(PICS)を引き起こす因子となります。
そしてこの疾患は、患者家族にまで及ぶことがあるため、患者さんと患者家族に対する環境的な配慮が必要とされています。

患者さんや患者家族の悩み

これからのICUのつくり方

ICUをつくるには「満たす必要のある施設基準などの設備要件」「高度な治療方法を運用できる治療環境」「より多くの患者さんを診ることができる運用体制」「患者さんと患者家族の心理的負担を軽減する居住環境」など、考慮する項目が多岐にわたります。

私たちは約半世紀にわたって多くの病院のICU環境をつくり、「つくる人」としてノウハウを積み上げてきました。しかし、未来が分かっているわけでもなく、ましてや診療のプロではありません。

ICUという空間を「つかう人」は医師・看護師・臨床工学技士・理学療法士などの医療従事者、そしてそこで治療をする患者さんとそのご家族です。その方たちの知見があってはじめて、これからのICUをつくることが出来ると私たちは考えています。

私たち「つくる人」が「つかう人」のように、ICUを「つかう人」が「つくる人」のように、お互いに目線を合わせて、知恵を絞ってICUをつくっていきます。
これが私たちの考えるこれからのICUのつくり方です。


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