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病院の建て替えやリフォームはどう進む?【フェーズ3実施設計】【フェーズ4着工・施工】【フェーズ5開院】までを解説!

病院づくりの流れと、各フェーズで医療従事者の皆さんに気にしてほしいポイントをお伝えする本連載。これまで基本構想・計画基本設計と2つのフェーズについてお伝えしてきました。

今回はそれ以降のフェーズをまとめてご紹介します。

※本記事はヴェクソン医療看護出版の書籍「スタッフを支えるICUの環境とデザイン」に寄稿した内容を一部改変して執筆しております。


フェーズ3 実施設計

医療環境を決定づけるフェーズ

実施設計のフェーズでは、部門配置や部門内の部屋割りなど、おおよそ決められた各空間の壁面・床面・天井面に必要な設備などを詳細に検討していきます。それゆえ、「詳細設計」と呼ばれることもあります。

実施設計で決まること
意匠:内観・外観・間取り・装飾などのデザイン
構造:間取りや立面断面、柱や梁(はり)の性能・形状・配置
設備:コンセント、医療ガス、情報LAN、照明、空調、セキュリティロックなどの設備環境の数量と配置

実施設計が始まると、施工にむけた図面がつくられます。そして大きな配置の変更は不可能となり、部分的な変更に限られていきます。

前のフェーズで要望した内容に立ち返る

医療従事者の皆様に実施設計で留意していただきたいことは、基本構想で掲げられているコンセプトや、基本設計で要望した内容に立ち返ることです。「何でそんなそんなことを?」と思う方もいるかもしれません。

病院の建築計画は長期にわたる上に、医師・看護師・臨床工学技士など異なる役割の医療従事者の意図を汲んで組まれるため、多種多様な要望となります。それゆえ、基本設計の内容を十分に確認した上で、意匠・構造・設備それぞれの要望を満たしているかどうかを検討しましょう。

検討ポイント1:患者の視点で検討する

とある計画のエピソードの一例をあげると、窓の大きさによって患者の視線に何が写りそうかなどをシミュレーションしたり、天井の素材を工夫することで寝たきりの患者に対して視覚的に良い環境になるのではないか、と議論したことがありました。細かい部分であっても気になることは確認し、話を詰めておくことが大切です。

検討ポイント2:運用を想定して検討する

治療行為・看護行為の観点で検討する際には、病床で使用する医療機器のレイアウト、諸室の机・椅子・棚など什器備品のレイアウトなど、運用を想定しながら検討することで、必要な電源や特殊な設備が見えてきます。こちらも当初の想定をふまえつつ、現時点を取り巻く状況と鑑みて詳細に検討しましょう。

3Dイメージによるシミュレーション

フェーズ4 着工・施工になったら

病院を建てるフェーズです。設計図の内容に齟齬が無いか、変更希望が無いか、総合図という図面で最終的なヒアリングを行いながら施工が進んでいきます。
ここまで来ると建築に関わることは終わりますが、運用計画を固めつつ、各諸室に必要な什器備品の選定、レイアウトなどを最終決定していきます。

注意したいポイント1:総合図の承認は慎重に

施工者が施工を行う前に、施主である病院側が総合図を『承認する』という工程が必ず発生します。
総合図を一旦承認すると、承認された図面に記載の無い内容や変更要望等は、内容の大小に関わらず追加費用が発生しての対応となります。総合図の内容確認の際には、十二分に注意を払い、しっかりと現場の意向に沿ったものになっているかどうか確認することを心掛けてください。

注意したいポイント2:施主検査では希望通り施工されているか確認しよう

引き渡し前には「施主検査」が行われます。
施主検査の際には、総合図で承認された内容通りに施工されているかどうかをしっかりと確認し、齟齬があれば、是正依頼を行いましょう。打合せの過程を記録した議事録等があると、是正対応がスムーズに行われやすくなります。

フェーズ5 開院を迎えたら

医療従事者の皆様はここからが本番です。
いざ使い始めると想定外のことが起きたり、さらなる医療技術の進歩により、場合によっては改善が必要となることもあるかもしれません。
治療環境は一度つくったら終わりではありません。さまざまな変化に合わせて、環境を常にデザインしつづける必要があるのです。

セントラルユニの姿勢

セントラルユニは病院建築計画が終わり、納めた後もお客様に寄り添っていきます。つくった環境「コト」に「人と運用」が関わるとどう変わっていくのかを振り返り・評価を行い、製品や運用環境の改善と将来を見据えた理想の病院づくりを続けていくことに取り組んでいます。

病院づくりの知っトク!いかがでしたでしょうか?
すでに建築計画または改修計画があるがどうして良いか分からないという方、未だ計画はないが現状の治療環境・設備について課題を感じているという方などの相談承っております。いつでもご連絡ください。


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本記事では病院建築全体の流れをお伝えしていますが、そのなかでもICUにおける空間づくりに特化した専門書籍がございます。
各分野の専門家による洞察と経験を本にまとめ「せっかく造ったのに」と後悔することのないICUを実現するための知識が集約されています。よろしければ、ぜひお手に取ってご覧ください!

ヴェクソン医療看護出版 「スタッフを支えるICUの環境とデザイン」


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