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影ができないって本当?無影灯のしくみ

手術中に術部を明るく照らす、天井から下がっている医療用照明。それが「無影灯」と呼ばれていることをご存知でしょうか。
無影灯は医療機器として定められており、名前の通り影によって手元が暗くならないような工夫がされています。


影ができないって本当?無影灯のしくみ

「影が無い」と書きますが完全になくなるわけではなく、厳密には「影をできるだけ薄くした」照明器具です。
手の真上から光が当たると当然手の下には影ができます(左図)。しかし、いろいろな角度から光を当てることで影を薄くすることができます(右図)。
この影を極力薄くするということが、無影灯にとって最も重要な要素の一つです。

いのちを守る重要な灯り

無影灯は政令により一般医療機器、つまり「不具合が生じた場合でも、人体へのリスクが極めて低いと考えられるもの」に分類されています。イメージとしても、生命の維持に直結する機器という印象はあまりないかもしれません。
一方JISでは、無影灯を無停電非常電源(停電が起きても切れることのない電源)につなげるよう定められています。想像してみれば確かに、手術時にいきなり術者の手元が真っ暗になってしまっては大変危険ですね。
実は無影灯は、私たちのいのちを守る重要なサポート役なのです。

無影灯の進化

バルブ(ランプ)の発展に伴い、無影灯も進化を遂げてきました。
そのなかで、医療の現場にはどのような変化があったのでしょうか。
 
たとえば、以前の主流であったハロゲンバルブでは発熱量が多く、無影灯の真下で繊細な操作をしている術者は非常に暑くなります。現在の主流であるLEDバルブでも発熱はありますが、大きく軽減されました。
 
またLEDバルブ自体も、特有の青白く見える光から演色性の良い光へと進化しています。手術では赤色の微妙な違いを見分けることが重要になる場合もあるため、こちらも大事な進化と言えます。

演色性とは、物体を照らしたときにその物体の色の見え方に及ぼす光源の性質のことです。太陽光(自然光)を100とした場合、どれだけ色の見え方が再現されているかを示す演色係数によって評価されます。

これからの無影灯と手術室

最近では「無影灯が手術室空調を妨げていないか?」という点が注目されています。
空調の吹き出し口は手術台の真上にあることが多いため、灯体は吹き出し口と術野の間の清潔な空気の通り道にあります。そのような中で術野をより清潔に保つために、灯体の形状や空調の工夫がなされています。

無影灯に関する豆知識、みなさんはご存知でしたか?
こうした機器や設備が進化し、正しく使われることで、いのちを守る環境が作られています。


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