手術室づくりにおいて、つくり手が意識しているポイントとは?手術の流れから解説!
わたしたちは毎年数百件の手術室の施工に携わっています。手術室環境は医療機器の進化など日進月歩であるとともに、各医療施設によって特長があります。
それゆえ術式によって設備環境にどんな設備や機器といった「モノ」が必要で、どんな運用をするのかといった「コト」を医療従事者のみなさまと共に考えたうえで、手術室環境をつくる必要があると考えています。
今回は「手術室をつくる」際のポイントを手術を行う流れに沿ってご紹介します。
手術のはじまりからおわりまで
手術は患者さんが入室してから退室までに大きな5つの場面が存在します。
手術室環境をつくるにあたってはそれぞれの場面での気にしておくべきことがあります。
1. 患者入室
手術を受けるにあたり、患者さんは自分で歩いて手術室に入るのが一般的です。もちろん歩くことが難しい状態の患者さんや、幼児の患者さんなどはこれにあたりません。
患者さんにとって手術は、一生で数度しかない命を懸けた大イベントです。人生の岐路に立つ患者さんの緊張を少しでも和らげるため、暖色の内装や照明を使ったあたたかい雰囲気でお出迎えしたい、というご要望をいただくことが増えています。
2. 麻酔導入
患者さんの準備が終わるといよいよ麻酔の導入です。患者さんの頭もとには麻酔科の医師が立ち、麻酔をかけて行くのですが、右側に麻酔器、左側には麻酔関連薬剤を投入するためのシリンジポンプが配置されます。
麻酔科医の先生の右手に麻酔器を、左手にはシリンジポンプを配置しています。
3. 手術開始・・・様々な術式に対応する
手術室環境は近年「ユニバーサル」「コンバーチブル」「汎用性の高い」といったキーワードで語られるように「一つの部屋で様々な術式に対応できる手術室」が増えてきています。その意図は限られた手術室で少しでも多くの方の治療を行うためです。
▼参考事例 「日本医科大学 武蔵小杉病院様」
それは一方で、術式によって手術室内の医療機器や設備の配置が頻繁に変わり、併せて手術に立ち会う医療従事者の立ち位置、動線が変わることを意味しています。
セントラルユニではCARIVというシミュレーションツールを用いて、計画されている未来の手術室空間に術式ごとの医療機器や設備を配置、医療従事者の立ち位置や患者さんの頭の位置などをプロットし、実際の運用を視覚的に確認しつつ検討することができます。
▼CARIVについて詳細はこちら
4. 手術終了・麻酔覚醒、そして患者退室
手術が終わると麻酔導入時の位置に機器を戻して患者さんの覚醒に備えます。ポータブルレントゲンを用いて体内に遺残がないか確認したのち、薬を使って覚醒させていきます。
入室は歩行でしたが、麻酔から醒めたばかりの患者さんはベッドで搬送されるかたちで手術室を退出していきます。重症の患者さんはICUやHCUに、それ以外の方は一般病棟に搬送されますが、中にはリカバリールームや PACU「麻酔後ケアユニット」とよばれる一時的に術後患者さんの全身状態への継続的監視を行う環境を経由し、安定した全身状態で一般病棟へ橋渡しを行う施設もあります。
患者さんの安全と効率的な運用を両立できるとして近年見直されつつあるPACU。実際、「PACUを作りたい」というご相談も頂戴します。セントラルユニでは、手術室の建築的トレンドや他施設での事例をもとに、患者さんと現場の医療従事者の皆さんにとって理想の環境づくりのお手伝いをさせていただいております。
役割が異なるからこそ「コト」づくりが必要
5つの場面においては手術をする医師、器械出し看護師、麻酔科の医師、外回り看護師と役割によって要望が異なるため、それぞれの要望を同時に満たすことが難しいこともあります。しかし、シミュレーションツールを用いて具体的なイメージを元に議論をすることで別の解決策、「コト」づくりが見いだせることに繋がりやすくなります。
わたしたちは常に進化する手術室環境、手術室づくりを医療従事者のみなさんと丁寧な議論、検討を重ねてより良いものにしていきたいと考えています。